マンション経営での土地に対する相続税評価額のポイント


前号では、建物の相続税評価額の圧縮率が入居率=賃貸割合の違いで開きが出るか、シミュレーションしました。
今回は、アパート・マンションの土地に対する相続税評価額をシミュレーションしてみます。
賃貸割合の効果は土地にも影響する
賃貸割合の効果は、建物だけではなく土地にも影響を及ぼします。土地についても、どの程度相続税評価額に差が出るか見てみます。アパート・マンションを建てた土地の相続税評価額は下の式で表すことができます。


式に含まれる「自用地評価額」というのは、「路線価×面積」で表す入居者の権利などが付いていない土地の評価額のことです。不正形の土地などさまざまな補正がある場合は補正後の評価額となります。
「借地権割合」は基本的に「借家権割合」と同じ考え方
地主から土地を借りて自宅を建てている場合、その土地を利用する借地権が借主に発生します。借地権も財産とみなされ相続が発生した場合、課税の対象となるため、国税庁が借地権割合を設定し評価します。借地権割合は土地の場所によって数値が異なります。そのため、路線価図の図面上に路線価とともに記載されています。住宅地ではおおむね50~70%に設定されています。
また、自分が所有する土地に自分でアパート・マンションを建築する場合、「貸家建付地」として
「借地権割合×借家権割合(一律30%)」相当額
を控除することができます。
上の式には、「賃貸割合」が含まれています。土地に対しても「賃貸割合」が関係していることが分かります。土地の相続税評価額にも「満室」であることが影響しています。
土地も入居率の違いで相続税評価額に大きな差が出る


それでは、アパート・マンションが満室であった場合と半分の50%が空室であった場合で、どれほど相続税評価額に差が出るのでしょうか。
金額 | 内訳 | |
---|---|---|
満室の場合 | 4,100万円 | 自用地評価額:5,000万円 × (1 - 借地権割合60% × 借家権割合30% × 賃貸割合100%) |
50%空室の場合 | 4,550万円 | 自用地評価額:5,000万円 × (1 - 借地権割合60% × 借家権割合30% × 賃貸割合50%) |
ここでも、アパート・マンションの入居状況に合わせて相続税評価額の圧縮に開きが出ます。
満室経営では大きな相続税対策効果を発揮


最後に建物と土地を合計して、相続税評価額にどれほどの差が出るか見てみます。
金額 | 内訳 | |
---|---|---|
相続税対策しない場合 | 1億円 | 現金5,000万円 + 自用地評価額5,000万円 |
アパート・マンションを建てて空室率50%の場合 | 6,675万円 | 建物の評価額2,125万円 + 土地の評価額4,550万円 |
アパート・マンションを建てて満室経営の場合 | 5,850万円 | 建物の評価額1,750万円 + 土地の評価額4,100万円 |
マンション経営で満室にしたとき、相続税対策をしない場合と比較して4,150万円、空室50%のマンション経営と比較しても825万円も圧縮することができます。マンション経営で最大限に相続税対策効果を発揮させるために、空室を減らし満室経営にすることの重要性が理解できたのではないでしょうか。