2020.04.20更新

日本の住居感覚について考える

サブリースを知って、活かし、安定したマンション経営を実践するためにも、日本の「住居」に対する感覚や背景を再確認して、サブリース、マンション経営業界が持つ問題点について考えます。

賃貸アパート、マンションの
入居者軽視の不思議

条件に合った物件を見つけられない入居者

日本全国の平均空室率は22.7%と4部屋に1部屋は空室であるのに、入居者は自分の条件に合った物件を見つけられない状況にあります。 入居者の多くは、下の条件で部屋を探します。

  • いわゆる都心にあるようなマンションの佇まいを持ったRC造
  • 交通の便が良い
  • 駅から近い
  • 日当たりが良い

しかし、予算の都合で妥協が必要になり、希望していた条件をひとつずつ外していくと目にする物件が「プレハブアパート」です。プレハブアパートはそうした仕方なく選択する物件で、部屋探し始めた人の第一希望に上りません。それなのにプレハブアパートが大量供給されてきたということも事実です。

このようなことは他の業界では考えにくいことですが、賃貸アパート・マンション業界ではなぜこのような入居者軽視ともいえる状況が続いてきたのでしょうか。

賃貸アパート、マンションの社会的地位の低さ

住環境ヒエラルキー

賃貸マンション業界が入居者軽視を続けてきた理由のひとつに、「賃貸アパート・マンションの社会的地位の低さ」があります。

これまで日本人の住居感覚は、トップが一戸建て住宅、次に分譲マンションが位置し、底辺に賃貸住宅があるというピラミッド型になっていました。これは、昔から脈々と受け継がれてきた日本人の人生設計に根付いてきたものだと考えられます。

  • 学生時代は収入が少ないため家賃の安いアパート
  • 社会人になって収入が安定し始めると少しグレードの上がった1Kや1DKのマンション
  • 結婚し少し広い1LDKや2Kのマンション
  • 子どもができると家賃と支払いが同額になるローンを組んで分譲マンション
  • 収入がさらに増えたタイミングで一戸建てを購入

このように、年齢や収入によって住環境のヒエラルキーができています。

つまり、日本人にとって賃貸アパート・マンションは社会的に最も下層の地位という感覚が強く、そのため入居者軽視の状況が続いてきたといえます。

ライフスタイルに合わせて住宅を選ぶ

一戸建てがゴールではない

ところで、もし不動産全般のビジネスで成功しようと思ったら、上のどの層を選ぶでしょうか。不動産業は、取り扱う案件の金額が多いほど収益も大きくなります。それはピラミッドの上に位置する「一戸建て」や「分譲マンション」を購入する層であり、ピラミッドの下層である「賃貸アパート・マンション」の入居者層への優先順位は低くなるわけです。

私たちにはごく当たり前に感じるこの話も、世界に目を広げると実はまれなことなのです。アメリカ、ヨーロッパでは、ライフスタイルに合わせて住居を選ぶという考え方が一般的です。結婚や転勤の買い替えもあれば、子どもの独立に合わせた借り替えもあります。そこには「一戸建てが頂点でありゴール」という考え方はほとんどありません。収入や年齢ではなくライフスタイルに合わせて住宅を選んでいるのです。