冬の山陰を代表する味といえば「松葉ガニ」。それを名門旅館とすると今回は、山中の“秘湯”にあたる名店を紹介したい。
米子市内にある東亜市場という青果市場の中にある間口も奥行きも3間あるかなしやのこじんまりした蕎麦店。中央に囲炉裏端と壁際に向い合せで二人ずつ座るというか腰かけられる席がなんとか作ってある7席のお店。メニューは「かまあげ」(関東風に言うと“かけ”)と「もり」の冷熱各1種を量で大中小6種のというシンプルな構成+オプションは「いか天麩羅(げそ)」「長芋とろろ」の2種のみ。 営業時間はもちろんランチタイムオンリー。期待薄の店舗に対し、蕎麦は秀逸。そば殻ごと挽いた粗めの蕎麦粉を使い、丁寧に練り上げ、茹で上げたみずみずしい蕎麦。まずは何もつけずに一口。まさに蕎麦本来の味を引き出す教科書的な二八蕎麦。 次に空の蕎麦猪口に少量辛口の“ツユ”を入れて手繰るとこれまた仄かに鰹節の香る甘さを抑えた男前、江戸前の “辛ツユ”の旨味と蕎麦の持つ風味が合わさりシナジーを生み出す。〆は蕎麦粉を溶かし込んだどろっとした蕎麦湯で冷えた胃腸を整えつつ蕎麦の香味を堪能する。蕎麦好きなら迷うことなく米子にお運びの際には是非とも行かれるべし!
盛屋 鳥取県米子市米原9-3-20
営業時間 12:00~14:00