
「湘南のカレーは雰囲気で食わせる」
そんな声も、まことしやかに囁かれる。
海沿い、ヤシの木、行列…。確かに舞台装置は整いすぎている。
味は二の次ではないか、と。
そんな貴兄に朗報である。
七里ガ浜の住宅街に潜むこの一軒。
国道134号線沿いにあるカレー有名店「珊瑚礁」の本店、見かけ倒しではない。
ひと口すくえば分かる。重く、濃く、そしてどこか甘い。
スパイスで押すのではなく、旨味で畳みかける欧風の王道。
舌にまとわりつくようなコクは、いわゆる“家庭の延長線”にはない。明らかに一段上の設計である。

主役のビーフもまた然り。ごろり、とした塊。
柔らかさ一辺倒ではなく、あえて繊維を感じさせる仕上がり。
噛むほどに肉の旨味とルーが混ざり合い、皿の上で完成する。
この“肉で食わせるカレー”という発想、実に潔い。
一方で「甘い」「重い」との声もある。
確かに軽やかなスパイスカレーを求める向きには、少々骨太に映るだろう。
だが、それこそがこの店の矜持。迎合しない味は、往々にして記憶に残る。
店の造りもまた抜かりない。
南国の空気を纏った洋館風の佇まい。
都心では得難い“非日常”が、料理の印象をさらに押し上げる。
行列すら、その演出の一部に思えてくるほどだ。
観光地の人気店と侮るなかれ。湘南の空気と濃厚欧風カレー、そして確かな素材。
これらが三位一体となったとき、その皿は単なる食事を超える。
七里ガ浜の一皿。
それは“カレー”というより、ひとつの体験である。
珊瑚礁 本店
神奈川県鎌倉市七里ガ浜東3−1−2








