目次

座談会参加者

【chapter 1】サブリースの家賃の減額リスクをきちんと説明してほしい

【chapter 2】サブリースの上手な活用法を知ってほしい

【chapter 3】「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律案」が閣議決定 今こそオーナー自身が学び、成長するチャンス

座談会参加者

千葉大家倶楽部 代表
北嶋 勇次オーナー 【プロフィール】
お金の専門家/元メガバンク支店長/不動産オーナー/
学習院大学さくらアカデミー講師
菅井 敏之オーナー 【プロフィール】
LPオーナー会 代表
前田 和彦オーナー 【プロフィール】
ファシリテーター
「家主と地主」編集長
永井ゆかり氏
JPMCグループ CEO
日本管理センター株式会社
代表取締役 社長執行役員
武藤 英明
chapter 1

サブリースの
家賃の減額リスクを
きちんと説明してほしい

サブリース業者の 不誠実な説明を 禁止する本法案の持つ意味は大きい

永井
「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律案」の中に、サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置があります。どういった感想を持たれましたか。
前田
家賃減額のリスクをきちんと説明し、不誠実な説明については禁止する本法案の意味は非常に大きいと感じています。
北嶋
法案の内容はいいと思います。しかし「私は聞いてないよ」というオーナーも出てくると思うので、オーナー側の意識改革も同時に必要でしょう。
菅井
大切なのは実際の運用です。例えば「70歳以上の人と賃貸住宅建設などの大きな契約を結ぶ場合は、自身の子供を同席させる」あるいは「何月何日何曜日何時、晴れ、場所はオーナーの自宅で、30年の賃料保証ではないですよということを伝えたところ、承諾した」など、議事録として残す必要があると思います。履歴を残すことで、トラブルになった時の判断材料にもなるでしょう。法律と運用の両面をしっかり考えることが大切だと思いますね。

法案についてはメンテナンスフィーについてもきちんと明文化するべき

永井
日本管理センターでは、契約時の説明に2時間くらいかけていると伺いました。
武藤
サブリース契約を結ぶ際は、必ず賃貸不動産経営管理士の資格を持つ弊社社員が重要事項説明を行います。説明には2時間を要しますから、途中で「もういいよ、大丈夫だよ」とか、「わかった、わかった」などと言われる方もいらっしゃいます。しかし、それでも一言一句、しっかり説明するよう に社員には徹底して教育しています。おかげさまで18年間、家賃減額に関わる訴訟はゼロです。
永井
法案に関してはどのようなお考えをお持ちですか。
武藤
法案についてはメンテナンスフィーについてもきちんと明文化するべきと考えています。メンテナンスや修繕を行うことが借り上げの条件であるならば、その部分も全部開示して、重要事項説明に盛り込むべきだと思います。最初からどのくらいのメンテナンスフィーや積立金が発生するかを把握できるようにすべきだと思います。
北嶋
同感です。実際に経営していて感じることは、修繕費用の重さ。必要なものだとわかっていても、その負担は想像以上でした。リフォーム会社に相見積もりを取ろうにも、サブリース会社を通して依頼しなければならないのか、それともオーナー自身で選択していいのか、説明がないためわかりません。
chapter 2

サブリースの
上手な活用法を知ってほしい

近年、急降下するサブリースのイメージ

永井
近年、スルガ銀行や「かぼちゃの馬車」といった問題もあり、サブリースのイメージが急降下しています。
武藤
私たちは、ポスト賃貸住宅メーカーとしてサブリースを行っていますから、トラブルが多いサブリースとは一線を画しています。違いは、賃貸住宅を建てていないことで、建てるためのサブリースではなくて、運用としてのサブリースをご提案しています。2018年のサブリース受託数は8500戸、2019年が1万4500戸、2020年に至っては2万戸近いペースで受託しており、伸び率は好調に推移しています。
永井
依頼があるのはどういった物件が多いですか。
武藤
やはり苦戦物件が多いのは事実です。弊社がお引き受けする段階での平均入居率は、44・1%。2019年の実績でいうと、約3カ月で91・6%までに持っていきます。これは手品でも何でもなくて、実際にコストをかけ、入居促進をしているからです。オーナー様からいただく広告費だけでは難しいので、弊社で捻出しています。

サブリース専業の企業と、建築営業のためにサブリースを扱う企業とを区別してほしい

永井
皆さんがサブリース業者や日本管理センターに求めることをお聞かせください。
前田
日本管理センターのようにサブリースを専業とする企業と、建築営業を取りたいがためにサブリースをやる会社とを、わかりやすい言葉で区別してほしいです。日本管理センターは正当な家賃を明示し、共にフィーを分け合うという考え方です。非常に透明性があり、オーナーも納得できるスキームです。ひとくくりでサブリースという言葉にするのではなく、別の言葉があってもいいのではないでしょうか。
北嶋
管理会社として専門的にサブリース機能を持った会社があることを知らない人も多いため、サブリースのイメージを高める啓蒙活動は必須。日本管理センターに先陣を切っていっていただきたいです。
菅井
私も同感ですね。日本管理センターが好きなオーナーのファンをたくさん増やして、どんどん御社のことを発信したほうがいいと思いますよ。
永井
最後に武藤社長、皆さんの期待に応えて一言お願いします。
武藤
サブリースはサブリースでも、われわれはメーカー主体のサブリースとは違うスタンスでやっているということを、様々な形で発信していきたいと思います。私たちの事業は社会的意義があると思っていますが、それをもっと自覚し、明確にしていくことが務めだと感じています。
chapter 3

「賃貸住宅の管理業務等の適正化に
関する法律案」が閣議決定
今こそオーナー自身が学び、成長するチャンス

座談会ファシリテーター
「家主と地主」編集長 永井ゆかり氏

サブリース事業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置が明確に

「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律案」が、3月6日に閣議決定しました。かねて公益財団法人日本賃貸住宅管理協会をはじめ、賃貸業界が団結し、本件の法制化を望んできたことを考えると、大きな一歩と考えられます。

とりわけサブリースにつきましては、サブリース事業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置が明確になりました。サブリースに関わるトラブルを未然に防止するため、仮に1戸でもサブリース契約があれば、勧誘時や契約締結時に一定の規制が導入されることになります。また、サブリース業者と共同でサブリースによる賃貸経営の勧誘を行う者に対しても、規制の対象です。違反した者に対しては、業務停止命令や罰金等の措置を行うことで実効性を担保するという内容になります。

サブリース契約の締結前の重要事項説明が必須

サブリースは従来、様々な場面で社会問題化することが多く、賃貸業界に関わっていない方でも認知するほど騒がれてきました。そしてそのイメージは決して良いものではありません。その理由は明白で、これまで業者による不当な勧誘行為が数多く行われてきたことが挙げられます。

サブリース業者や勧誘者による特定賃貸借契約――特にマスターリース契約ですが、この勧誘時に家賃が減額されるリスクなどといった相手方の判断に影響を及ぼす事項について故意に事実を告げない、または不実を告げる行為がしばしば行われてきました。結果的に、業者とオーナーとの間でトラブルが頻発。裁判に発展する事例も後を絶ちません。

今回の法制化により、これらの勧誘時における不当な行為が禁止されます。加えて、特定賃貸借契約締結前の重要事項説明、つまりマスターリース契約の締結前の重要事項説明ですが、家賃・契約期間を記載した書面を交付して説明しなければならなくなります。この2点を違反した者に対しては罰則が設けられ、今年12月の法施行が見込まれています。

オーナー自身の知識やリテラシーを高めていく時がきた

私自身は、サブリースの仕組み自体は決して悪くないと思っています。所有と経営の分離が進む中で、経営の部分をプロに任せ、安定的な収益を得ることがサブリースの最大メリット。ですから、サブリースを選択したほうがいいオーナー、いい物件はあるのです。

しかし、不動産投資という形で、不動産に馴染みのないごく一般のサラリーマンでもアパート・マンションのオーナーになれることが普通になってきた中で、サブリースが売り手にとって非常に効果の高い〝セールストーク〟になってきたことも事実でしょう。だからこそ、オーナーとしてもサブリースの何がメリットで何がデメリットなのかを学び、しっかりと内容を認識していかなくてはなりません。

情報量の多い業者側の規制はある程度は必要でしょうが、今こそオーナー自身の知識やリテラシーを高めていく時だと考えています。

千葉大家倶楽部 代表 北嶋 勇次(きたじま ゆうじ)オーナー 長崎県長崎市出身、1959年生まれ。1981年に防衛大学校卒業、1983年大手日用品メーカーに入社し、新規事業子会社役員を務めるなど、34年間勤務。現在は、千葉大家倶楽部の代表を務め、公認不動産コンサルタント、公認相続コンサルタントの資格を有する。保有物件はテナントビル1棟、RC1棟(19室)、ファミリーマンション1室。

【サブリースへの思い】

不動産に関わるようになったのは、出身地の長崎で長屋を相続したことがきっかけ。10年ほど経った時、新築の建築を検討したことがありました。その際、あるアパートメーカーに問い合わせたところ、物凄いスピードでボーリング調査や地質調査をし、事業計画、融資、完成後のパース図など、次から次へと提案資料を持ってきました。その当時私はサラリーマンでサブリースという言葉さえ知らず、20年で返済が終わり、家賃も保証してくれるとはなんて素晴らしい仕組みなんだと思っていました。最終的には母の反対で見送りましたが、その後しばらく経ってから中古不動産を購入し、現在は1棟の物件でサブリースを委託しています。物件が遠方にあり、駆けつけるとなると1時間半かかるため、往復の手間を考えるとサブリースしたほうがいいという判断です。

しかし、最近は61歳という自分の年齢と築30年になる物件を考えた時、売却も検討したほうがいいかなと。そうなるとサブリースの手数料が10%くらいなので、見た目の表面利回りが下がることがネック。色々と見極めが必要ですね。

お金の専門家/元メガバンク支店長/不動産オーナー/学習院大学さくらアカデミー講師 菅井 敏之(すがい としゆき) オーナー 山形県朝日町出身、1960年生まれ。 1983年に学習院大学卒業後、三井銀行(現・三井住友銀行)に入行し、個人・法人取引、およびプロジェクトファイナンス事業に従事する。2003年に金沢八景支店長(横浜)、2005年中野支店長(東京)着任。48歳で銀行を退職。その後、起業し、アパート経営に力を入れる。現在、首都圏、山形に70室の不動産を所有。全国の講演会で講師として活動するほか、資産形成のための戦略立案のアドバイスも行っている。

【サブリースへの思い】

銀行目線でお話しすると、サブリースがある物件とない物件とで、どちらが融資に有利かと問われれば、当然サブリースありの物件です。通常、与信は、物件と借り入れる人の属性で決まります。しかし、サブリースが入ることによってこの属性の部分が相対化され、サブリースを代行してくれる管理会社の信用、つまりオペレート能力を見ることになります。財務体質のいい会社が一枚かむことによって、融資の主体者が借り入れる人の属性から、実際上のリスクを取れる会社のほうに移るのです。

最近は、「かぼちゃ」「スルガ」「サブリース」が三大ネガティブワードにタグ付けされている印象があり、サブリースのイメージが一人歩きしていますね。銀行もオーナーもきちんとサブリース会社の財務状況を見ることで、“良い活用”ができるのではないでしょうか。

LPオーナー会 代表 前田 和彦(まえだ かずひこ) オーナー 愛知県名古屋市出身。設備会社に勤務し、開発部門の省エネ関係システム開発に携わる。退職後は名古屋大学院工学部に入学し、省エネ研究を行う。2014年1月レオパレス・オーナー会を設立し、のちにLPオーナー会に改称する。 建築設備士・空調・衛生設備士・冷凍空調技士・消防設備士、認知症予防リーダー・ファイナンシャルプランナー(2級)の資格を持つ。所有戸数は2棟で38戸。

【サブリースへの思い】

レオパレスオーナーの8割は、相続税対策で建設しています。相続税対策のセミナーに参加し、その後サブリースの説明をされ、レオパレスに引き込まれていくという状況です。自発的に賃貸経営について理解した上でサブリースを選択するという方ではないんです。ましてや、農家の方が多いので、土地は持っているけれども企業に勤めたことはなく、自分の限られたエリアで仕事をされてきた方が大半になります。

事業計画書を見せられて、なおかつ「家賃保証」という謳い文句や一括借り上げのイメージにより、家賃保証イコール家賃が固定だと思っています。レオパレスの社員も、「家賃は下げたことがないから30年間下げません」とか「レオパレスの事業計画は30年間賃料が変わらない」などと説明しています。ですから私の周りにいるオーナーの多くは、年数が経つと家賃を減額されており、サブリースについていい印象は持ち得ずにいますね。